この記事ではDRIP制度利用による複利効果について検証しています。
アメリカで証券口座を開いて株式を保有する上で必須ともいえる知識としてDRIP制度がありますが、一番のメリットとしてよく言われる複利効果がどれほどのものか、検証してみました。
「配当金がまた配当金を生んでお得」「課税されないから長期資産形成にぴったり」といった説明は、個人的にはあまり適切ではないという結論になりました。
また、課税関係は大変難しく、正確な情報はなかなか見つからず、分配金に課税されないという点について私が誤解をしていた部分があったため、改めて日米の歳入庁・税務署に問い合わせて調べてみました。
AmeliStock様にTwitter上でご指摘頂いたおかげで勉強になりました。ありがとうございました。

DRIP制度とは
制度概要
DRIP制度とは、保有している株式からの配当を現金で受け取らずに同じ株式の買い付けを行う制度(Dividend Reinvestment Plan)です。
アメリカの証券会社では一般的に導入されていて、私が口座を保有しているFirstradeでもDRIP制度を利用しています。
DRIP制度利用時に課税されるタイミング
アメリカの場合
DRIP制度による買付では、配当金が発生した時点では課税されません。
ただし、所得としてカウントはされますので、税務申告の際に税金を納付する必要が出てきます。
つまり、納税を最長1年ほど先延ばしにする効果があります。
決して課税されないわけではありません。
IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)の該当ページは以下ご参照。
一般的なサイトでは以下のサイトが分かりやすく解説しています。

日本の場合
現在、税務署とサクソバンク証券(日本で唯一DRIPに対応している証券会社)に問い合わせ中です。
情報あり次第更新したいと思います。
DRIPに関するどのサイトでも、「DRIPだと非課税」と解説されているので、アメリカと違って日本は本当に非課税だと良いのですが・・。
DRIP制度が利用可能な証券会社
アメリカ
Firstradeは実際に私が使っており、DRIP制度を利用してVOOの買い付けを行っています。

↑は私の紹介リンクです。こちらから口座を開設頂くと、無料でApple, Facebook, Bank of Americaなどの株を(多分ランダムで)1株もらえます。
面白い紹介プログラムですね。
以下のように、分配金が入った即日にVOOの買い付けを行っています。すべて自動です。
*スマホだとみにくいですね・・すみません。
また、以下のサイトで紹介されているBest Online Brokers5社を調べたところ、すべてDRIP可能なブローカーでした。

FIDELITY INVESTMENTS
TD AMERITRADE
CHARLES SCHWAB
INTERACTIVE BROKERS
E*TRADE
やはりアメリカではDRIP制度が一般的なようです。
日本
現在ではサクソバンク証券のみがDRIPに対応しているようです。
DRIP制度利用による効果 高配当株への投資で行った場合
比較してみたくなった理由
そもそも私は「配当金には課税されずに非課税でそのまま再投資に回され、売却した時に初めて売却益に課税されるだけ」と勘違いをし、

それはすごい節税だ!
と勢い余って誤解していたのですが、
課税の繰り延べが最長でも約1年ということでは、ほとんど節税効果ないんじゃないの?と思った次第です。

もしそうならDRIP制度にこだわって証券会社を選ぶ理由はなくなるね。
ということで、DRIP制度利用の効果はいかほどか、早速検証してみましょう。
アメリカのケースで検証しています。(日本も同じかどうか、調査中です。)
比較前提-利回り
高配当株に投資し続けた場合で、DRIP有り・DRIP無しの比較をしてみます。
VOO好きな私は高配当株に詳しくないので、有益な情報を配信し続けておられるもみあげ様の以下記事を参考にさせて頂きました。
ざっくりですが5%くらいで設定してみたいと思います。
比較前提-ケース分け

まずはロムニー大好き[毎月積立]の場合。
ケース1
・配当利回り5%/年。3月,6月,9月,12月の年4回配当。
・DRIP利用。
・年末12月に税金額の分株式を売却して税金を支払う。
・株価自体は一定。
ケース2
・配当利回り5%/年。3月,6月,9月,12月の年4回配当。
・DRIP利用せず。
・株価自体は一定。

続いて当初の保有株をホールドする場合♪
ケース3
・配当利回り5%/年。3月,6月,9月,12月の年4回配当。
・DRIP利用。
・年末12月に税金額の分株式を売却して税金を支払う。
・株価自体は一定。
ケース4
・配当利回り5%/年。3月,6月,9月,12月の年4回配当。
・DRIP利用せず。
・株価自体は一定。
税率はすべて20.315%としています。
結果
まずは毎月積み立てケース1と2のグラフは以下の通り。

え??
そうです、6年間続けてもほとんど変わりありません。
続けて投資額を一定にするケース3とケース4のグラフです。
同様に、6年間続けてもほとんど変わりません。
数値にすると以下のようになります。
ケース1と2で支払い税額の差はわずか400円、最終的な運用額の差は1,800円。
ケース3と4で支払い税額の差はわずか300円、最終的な運用額の差は1,100円。
という事で、DRIP制度を利用しても節税効果はほぼ無いということが分かりました。
結果 おまけ
世の中にはもっと投資額の多い方もいらっしゃると思いますので、以下のようなケースもご紹介しておきます。
- ケース1と2を「毎月20万円積立」に変更した場合にどうなるか(ケース5と6)
- ケース3と4を「当初10,000,000円」に変更した場合にどうなるか(ケース7と8)
表は以下の通り。
ケース5と6で支払い税額の差はわずか1,800円、最終的な運用額の差は7,100円。
ケース7と8で支払い税額の差はわずか2,900円、最終的な運用額の差は11,300円。
これだけ多額の投資をしても大きなメリットはありませんでした。
1年だけ納税を繰り延べても経済的な効果は小さいことが分かります。
DRIP制度を利用する意味はないのか?
節税による効果が小さいとしても、以下のようなメリットがあると思います。
端株に再投資できる
通常1株単位でしか購入できない場合でも、DRIP制度を利用すれば1株より少ない株数を購入できる。
*証券会社によっては端株になる配当金は現金で受け取る必要があります。
買付手数料がかからない
DRIPによる再投資には手数料がかからないことが多いです。
配当金を受け取って自分で買い付けを行う場合は手数料が発生し、配当金が少ない場合は手数料負担が大きく割に合いません。
最近は買付手数料が安くなってきていますので、このメリットが薄まってきています。
手間がかからない
配当金を受け取る際に自動で証券会社が買い付けを行ってくれるので、手間は一切かかりません。
これが一番意味がありそうです。

手間がかかるといつの間にかやらなくなっちゃうもんね・・
DRIP制度は本当に複利効果が大きいのか? まとめ
DRIP制度の効果を検証しましたがいかがでしたでしょうか。
衝撃的というか、思った通りというか、節税効果による複利効果は残念ながらとても小さいことが分かりました。
DRIP制度をネットで調べると「税金が浮いて複利効果は最大に!」と解説しているサイトが多く、一次情報を確認しなかった私は誤解していました。
(誤解したおかげでアメリカで証券口座を開く決心がついたので、怪我の功名でしたが・・。)
メリットの多いDRIP制度ですが、今回ご紹介していませんがデメリットもいくつかあり、証券会社を選ぶときに「DRIP制度が可能な証券会社を優先する」ほどの判断基準ではないかと思います。
それよりも買付手数料や為替手数料を比較して証券会社を選んだ方が良さそうです。
日本でDRIP制度可能な証券会社が1社ありますが、特に話題になっていないのはこういった理由からでしょうか。
*上記の内容は現時点で私の知り得る情報を基に記載しています。
可能な限り一次情報を調査の上公開しておりますが、万が一誤った情報があった場合、ご指摘・アドバイスを頂戴できればとても嬉しいです。
*投資は自己責任でお願い致します。
にほんブログ村
SBIネオモバイル証券 口座開設プロモーション
松井証券ではじめる株式取引
↑有益な投資家ブログがまとめて見られるサイトです!とてもオススメ!
コメント